賃貸ガイド
賃貸のエアコンが故障!修理費は誰が負担?
大家と入居者の負担の分かれ目

賃貸マンション・アパートのエアコンが壊れたとき、最初に気になるのが「修理費は自分持ちなのか、大家さん持ちなのか」です。この記事では、民法と国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の原文にもとづいて負担の分かれ目を整理し、費用を自己負担にしないための正しい手順を解説します(法令・資料は2026年8月10日確認)。
先に一番大事なこと
備え付けエアコンの故障で大家さん・管理会社への連絡より先に、自分で修理業者を呼ぶのはNGです。 法律上の要件を満たさない自己判断の修理は、費用を請求できず自己負担になるおそれがあります(詳しくは本文で解説)。
結論:備え付けエアコンなら原則は大家さん負担
物件の設備として備え付けられたエアコンが、普通に使っていて故障した場合、修理費は原則として大家さん(賃貸人)の負担です。 民法606条1項が、賃貸人に「使用及び収益に必要な修繕をする義務」を課しているためです。 ただし、入居者に原因がある故障と、「残置物」扱いのエアコンは例外です。
| ケース | 負担 | 根拠 |
|---|---|---|
| 備え付け(設備)+経年劣化・自然故障 | 大家さん | 民法606条1項本文・国交省ガイドライン(経年変化・通常損耗は賃貸人負担) |
| 入居者の故意・過失・手入れ怠慢が原因 | 入居者 | 民法606条1項ただし書・善管注意義務違反 |
| 前入居者が残した「残置物」エアコン | 入居者(通例) | 契約実務(契約書の設備/残置物の区分による) |
| 自分で購入・設置したエアコン | 入居者 | 自己所有物のため |
根拠となる法律(原文つき)
民法606条1項(賃貸人による修繕等)
賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。
→ 設備エアコンの修理は大家さんの義務。ただし入居者のせいで壊れた場合は除く、という条文です。
民法607条の2(賃借人による修繕)
賃借物の修繕が必要である場合において、次に掲げるときは、賃借人は、その修繕をすることができる。 一 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。 二 急迫の事情があるとき。
→ 入居者が自分で修理してよいのは「通知したのに大家が動かない」か「急迫の事情がある」ときだけです。
民法608条1項(賃借人による費用の償還請求)
賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。
→ 正しい手順を踏んで自費修理した場合は、その費用を大家さんに「直ちに」請求できます。
条文出典:e-Gov法令検索「民法」(明治二十九年法律第八十九号)原文を見る(2026年8月10日確認)
負担が分かれる4つのケース
① 経年劣化・自然故障 → 大家さん負担
国土交通省の原状回復ガイドラインは、損耗を「経年変化」「通常損耗」「賃借人の故意・過失等による損耗」に区分し、 経年変化・通常損耗は賃貸人が負担すべきとしています。 同ガイドラインの耐用年数の考え方では、エアコンなど冷暖房機器は耐用年数6年に分類されており、 年数が経った設備の自然故障は入居者のせいではありません。
② 入居者の過失(手入れ怠慢・破損) → 入居者負担
ガイドラインは「清掃・手入れを怠った結果汚損が生じた場合は、賃借人の善管注意義務違反に該当すると判断されることが多い」としています。 フィルター掃除を長期間怠って故障した、物をぶつけて壊した、といったケースは民法606条1項ただし書の「賃借人の責めに帰すべき事由」にあたり、入居者負担となります。
③ 残置物エアコン → 入居者負担が通例
前の入居者が置いていったエアコンを「残置物」として契約している場合、大家さんに修繕義務はないとするのが一般的な契約実務です。 詳しくは残置物の注意点で解説します。
やってはいけないNG行動
- ✕大家・管理会社に連絡する前に修理業者を呼ぶ — 民法607条の2の要件(通知+相当期間 or 急迫の事情)を満たさない修理は、費用を請求できないおそれがあります。
- ✕口頭連絡だけで記録を残さない — 「通知した」ことが後で証明できません。メール・管理アプリ・LINEなど記録が残る手段を使いましょう。
- ✕契約書を確認せずに交渉する — エアコンが「設備」か「残置物」かで結論が変わります。特約の有無も含め、まず契約書の確認を。
- ✕放置して症状を悪化させる — 水漏れを放置して壁や床を傷めると、その部分は入居者の責任を問われるおそれがあります。
大家が動かないときの正しい手順
- 1
契約書でエアコンの扱いを確認
「設備」なら大家さんに修繕義務。「残置物」なら自己手配へ。
- 2
管理会社・大家さんに記録が残る形で連絡
症状・発生日・部屋番号を伝え、修繕を依頼した記録(メール等)を残す。これが民法607条の2第1号の「通知」になります。
- 3
相当の期間を待つ
法定の日数はありませんが、真夏の冷房など生活に不可欠な設備は比較的短い期間で判断されると考えられています。再連絡も記録に残します。
- 4
対応がなければ自分で修繕を手配
民法607条の2にもとづき修理業者へ依頼。見積もりを事前に大家さんへ共有しておくとトラブルを防げます。
- 5
費用を大家さんに償還請求
民法608条1項により、支出した必要費は直ちに請求できます。領収書・見積書・やりとりの記録を保管しておきましょう。
「残置物」エアコンの注意点
前の入居者が退去時に置いていったエアコンを、大家さんが「残置物」として貸し出しているケースがあります。 契約書で残置物とされている場合、故障しても大家さんに修繕義務はなく、修理・交換は入居者負担になるのが通例です。
入居前・入居中にかかわらず、契約書・重要事項説明書の設備欄で エアコンが「設備」か「残置物」かを確認しておきましょう。記載が曖昧な場合は、管理会社に書面で確認しておくと後のトラブルを防げます。
※残置物の修繕義務について直接定めた法令・公的資料は確認できていません(2026年8月10日時点)。上記は賃貸借契約の一般的な実務にもとづく説明です。個別のケースは契約内容によって異なるため、契約書の確認と、必要に応じて自治体の無料法律相談等をご利用ください。
よくある質問
Q1. 賃貸の備え付けエアコンが壊れました。修理費は誰が払いますか?
Q2. 大家さんに連絡せず自分で修理業者を呼んでもいいですか?
Q3. 大家さんが何日も対応してくれません。どうすればいいですか?
Q4. 前の入居者が置いていったエアコン(残置物)も大家さんが直してくれますか?
Q5. エアコンのクリーニング代は入居者負担ですか?
まとめ・出典
- 備え付け(設備)エアコンの自然故障は原則大家さん負担(民法606条1項)
- 自分で業者を呼ぶ前に、必ず記録が残る形で管理会社・大家さんへ連絡(民法607条の2)
- 正しい手順を踏めば、自費修理の費用は償還請求できる(民法608条1項)
- 「残置物」エアコンと自分で設置したエアコンは入居者負担が通例
出典(いずれも2026年8月10日確認)
- ・e-Gov法令検索「民法」(606条・607条の2・608条)
- ・国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)